湘南ベルマーレ浮上のカギを握る男の思考とは?

茨城県取手市のフットサル取手にて湘南ベルマーレフットサルクラブ所属の鍛代元気選手によるクリニックが開催された。

この日は2部構成で「小学生の部」と「大人の部」の2コマが90分ずつ開催された。

 

定員の15名があっという間に埋まってしまった小学生の部では『見る・予測する』ということをテーマに行われた。クリニックの冒頭で挨拶した際には「楽しい時が1番上手くなる。楽しんでやっていこう!」と声を掛けた。

大人の部になるとより実践的に『相手を外す動き』ということをテーマに行われた。彼自身も一緒に動きながら一人一人に丁寧にアドバイスした。

 

テーマについて言葉だけを見ると難しく感じるが、彼が考えていることは非常にシンプルである。しかし彼にしかわからない世界観でもあるともいえる。

昨シーズン途中に湘南ベルマーレに復帰をするとピヴォとしてゴールを量産。圧倒的な存在感を示した鍛代元気の思考に迫った。

 

相手のDFが何を考えてるかを考える。

 

「クリニックのテーマとしては子供の方は見ること。今の状態がどうなっているのかだけじゃなくてこの先に何が起こるのかなっていうところまで含めて見る、それに伴ったゴールに向かうファーストタッチ。僕はフットサルにおいてそれが大切だと思っているので少しでも伝えられたらと思ってやりました。大人の方は相手を外す動き。ファーストコントロールで外したり、ボールを受ける前に外したりできれば有利になるので。(サッカーと違って)フットサルはコートも狭いし人数も(FPは)4人対4人なのでどうやっても数的有利を作れない。有利にするためにはどこかで相手を外さなければいけません。その動きが(子供たちのテーマであった)見るという部分を含めて生かせればと思ってやりました。」

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大人の部はより実践的に鍛代選手も参加して実施。

「(ファーストタッチの判断基準は)まず、ゴールへ向かえるか。次にゴールへ向かえる選手に出せるかどうか。その次がボールを失わないか。僕はゴールを取りたいし、そのためにシュートを打てるところにファーストタッチでボールを置けるかどうか。それかファーストタッチで打ってしまうか。まずは“自分がゴールに向かうためにどうする”のか考えます。それがダメなら“ゴールに向かう準備ができている選手に出せるか”どうか。それもダメだと判断したときに“攻撃を継続するために仕掛けるのではなくてやり直す”ことができるところにボールをコントロールできるかどうか。相手を外すために意識しているのは相手の“DFが何を考えてるのかを考える”こと。パスをもらえなければ意味がないので“味方が自分のことを見てるかどうか”。これは良いとか悪いとかって話ではないですが、味方選手が僕がフェイクで走り出した方にパスを出してしまったらそれは僕のことを完全に見れてないということ。もちろんそのパスが有効になることもあるけど。逆に僕が2回フェイクを入れた場面に対してフェイクが終わったタイミングでパスが出せる選手っていうのは僕のことをしっかりとみている選手だと思います。味方選手が見てくれていないと意味がないですからね。

 

相手のDFが何を考えてるかを考えるために僕は目を見ます。ここから先は感覚的な話になりますけど目を見ればなんとなくやりたいことがわかります。『インターセプトを狙ってるな』とか、『トラップした瞬間強く来るな』とか。そこはもう何が基準でとかじゃなくて相手のキャラクターを含めて完全に感覚です。逆に目を見たくても見れない選手は僕と目が合っていない選手。ということは僕のことを見ていないから外せるなとか。そんな感覚です。」

 

ブラジルへ渡った後チームのトレーナーと取り組んだという身体の動かし方を大人の部ではアップとして行った。

 

「身体の動かし方をトレーニングする上で注意しているのは正確性。無理なら無理で仕方ないので自分のできる範囲のところで正確に行うことが重要だと思っています。無理やり変な体勢になって続けるよりは良い体勢のまま続けていってその範囲が広がっていくことの方が重要だと思っています。例えば肘をつける動作であれば無理につけるのではなくて1週間続けて(可動域が広がっていって)それでつくようになればいいし、できなくても2週間後につくようになれば素晴らしいことだと思うので。」

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ブラジル時代に精力的に取り組んだコーディネーショントレーニングのデモンストレーション。

 

湘南ベルマーレのエンブレムを付けることはやっぱり特別。

 

「スクールで指導するときに意識していることはサッカーのスキルと人間としてのスキル、人間性については教えてあげないといけないなとは思っています。サッカーが上手くてもありがとうが言えない人ってどうなの?ごめんねが言えない人ってどうなの?って思うので。サッカーの技術っていうのは子供自身の身体の成長とかもあるし教え方・内容とかって各サッカースクール、各フットサルスクールそれぞれの会社の理念があるじゃないですか。それは僕が所属しているところに従います。それと僕にできることは僕の経験を伝えること。実際に試合でこうだからこうなるんだよっていうのは選手としてやっている強みでもあるので伝えるようにしています。」

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常に子供とも真摯に向き合った指導がこのクリニックでも見受けられた。

ブラジルで感じた日本とのギャップについて一番はプレースピードを上げるタイミングだと答えた。

 

「(海外でのプレーの場所としてブラジルを選んだ理由としては)世界一を獲りたくて。世界一に勝つには世界一のやり方を知らなければいけないと思ったんです。まずは敵を知らなければいけない。単純にブラジルが世界一だったからなんですけどね。2012年にタイで開催されたワールドカップの決勝を湘南ベルマーレとして現地に見に行ったんです。スペイン対ブラジルの試合だったんですけどそこでブラジルが優勝して。『ブラジルが世界一ならブラジルに行くしかない!』って思って。意外と単純な理由です(笑)。現地に着くまではやれるのかなとか不安で仕方なかった。だけど、着いて実際に見たときに『あ、俺やれるな』って思ったんです。感じた違いとしてはプレースピードの上げるポイントが違うなって思いました。日本のFリーグ、関東リーグのフットサルとブラジルリーグのフットサルの質が違うのでどっちが良いとか悪いとかはないんですけど、僕の感覚で言うと“ここ”、“チャンス”、“ピンチ”っていうタイミングにスピードが上がる。それ以外はゆっくり走るし、ゆっくりパスするし、ゆっくりした仕掛けをするんです。得点するためのここぞって場面とか失点をしないようにするDFの場面だけスピードがグッと上がる。僕が日本に帰ってきて一番驚いたのがその部分ですね。最初からずっと100%で走ってるみたいなところ。」

 

彼は以前から自身が幼少期よりサポーターとしてサッカーの湘南ベルマーレを応援していると公言してる。そのクラブへの特別な思いを聞いた。

 

 

「(湘南ベルマーレから再びオファーを受けてチームに加入したわけですが、やっぱり特別な思いがある?)湘南ベルマーレのエンブレムを付けることはやっぱり特別ですね。サッカーとフットサルではエンブレムは違いますけど、チームを応援してる少年はそのチームに入るという夢を見るじゃないですか。当時はサッカーで競技場に足を運んでいたわけですけど、湘南ベルマーレという自分が応援してた組織に所属できてることは幸せだなと思いますね。

 

 

昨シーズンは個人的に言うと良かったシーズンですね。チームの結果が出てないので良かったというのも変なんですけど、ブラジル移籍前に2シーズンプレーしていて1年目が6得点、2年目が1得点なんですね。出れない試合も何試合もあって。それが戻ってきて20試合で12ゴール、シュート数が40本。30%くらいの決定率で2桁得点、途中加入でチーム2位。1位はブラジル人のロドリゴが17点なんですけど、それに迫ることができたので。チームとして結果が出ていないので貢献できたとは言えないんですけど、数字としては良かったのかなと思いますね。」

 

途中加入で圧倒的な存在感を示した彼のメンタリティにはどのような変化があったのか。27歳というスポーツの世界では決して若いとは言えない年齢になった今のメンタル面についてはこう答えた。

 

 

「メンタルの変化としては27歳という中堅の年齢になって新人とか若手っていう気持ちじゃなくなった。新人とかだとなんでも吸収しようとして先輩にビビったりするけど、いくら先輩でももうビビらなくなった。もちろん人として尊敬はするけどペコペコしすぎないというか。コートの中では特にそうですね。あくまで下部組織ってトップの選手よりも何かが劣っているわけで『わ~トップの選手スゲー』って思ってる選手がトップに上がってきて一緒にプレーするときに僕のことをずっとスゲーって思いながらプレーするの?って。直接は言わないですけどね(笑)。そういうのって絶対プレーに出ちゃうし。そういうプレーが僕はしなくなったかな。

 

 

 オフの過ごし方は思うままに生きる。あれやんなきゃ、これやんなきゃってならないようにしてます。トレーニングしたければするし、休みたければ休むし、寝たければ寝るし。クリニックとかも呼ばれても嫌だと思えば断るし。」

 

新シーズンに向けた目標を語ってもらった。

 

 

「新シーズンへ向けた意気込みとしてはチームとしてプレーオフ進出すること。個人的には昨シーズンよりも良い数字。そしてホームゲームにたくさんの人が見に来てくれたら嬉しいですね。」

 

 

今シーズンは2009/2010シーズン以来8シーズン振りに奥村敬人が監督に復帰。それまでの間もコーチとしてチームを支えた奥村監督の下、湘南ベルマーレ。

P.S.T.C.LONDRINAから内村 俊太が昇格、町田から本田 真琉虎洲を獲得し、攻撃力に厚みを増した湘南ベルマーレはタイトルを獲得することができるのだろうか。

 

 

鍛代選手への感謝と活躍を祈りこの記事の結びとする。

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クリニックでアシスタントコーチを務めたROSAフットサルスクールの倉持コーチはかつてのチームメイト。

 

 

 

 

 

 

Yuta Kawakita